11月に入って、朝晩はだいぶ冷え込むようになりましたね。みなさん体調は大丈夫でしょうか。
少し時間が空いてしまいましたが、今回は10月11日、熊本の山鹿で行った山鹿さんとの練習試合について。25分×3本です。
11月から始まるU-14の大会に向けて、最終的な調整に入っている時期でした。新しいフォーメーションを試しながら、選手同士の組み合わせもチェック。そして9月から引き続き、勝負にはこだわっていく。そういう位置づけの試合でした。
今回も試合の内容報告だけでなく、クラブや僕の指導の考え方も踏まえて。
やりたいことだけでは、大会は戦えない

今回フォーメーションを変えたのは、山鹿さん対策ではありません。大会に向けて、現実的な妥協をどこで行うか。その模索です。
ビルドアップや前進の仕組みは、選手たちはもう十分に理解できています。ここは自信を持って言えます。ただ、大会ではいろんな相手と当たります。自分たちのやりたいことがそのまま通る試合ばかりではありません。やりたいことだけではなく、対応しないといけない場合の準備もしておく。今はそういう段階ですねー。
以前、「フォーメーションは初期設定にすぎない」という記事を書きました。配置を覚えることより、プレイの原則を鍛えることが大事だ、という話です。今回はその続きで、じゃあその初期設定をどう選ぶのか、という話になります。
「妥協」とは、制約を読むこと

妥協というと、理想を諦めるようなイメージがあるかもしれません。でも僕は、ここで言う妥協を「制約を読むこと」だと捉えています。
制約というのは、運動科学者のカール・ニューウェルが示した考え方です。人の動きやプレーは、「個人」「課題」「環境」の3つの制約が影響し合って決まる、というもの。個人の制約は、体格や技術、体力、その日のコンディション。課題の制約は、ルールや目的、スコアや残り時間。環境の制約は、ピッチや天候、そして相手チームです。
話が少し難しくなりましたが、要するに、同じ選手が同じ練習を積んできても、相手が変われば試合で出てくるサッカーは変わって当然だ、ということです。うちのサッカーは、決まった形を再現するものではなく、その日の制約の中で毎回生まれてくるもの。だから相手に対応することは、理想を捨てることではありません。理想を持ったまま、その日の制約を読むことです。
ただ、読むときには順番があります。先に決めるのは、何を残すか。こちらの良さは残す。そのうえで、どこまでなら相手に合わせて譲れるのか。その線引きを、大会が始まる前に一度試しておきたかったんです。試合の中で初めて対応を迫られると、選手は混乱します。事前に経験しておけば、それは混乱ではなく選択肢になります。
試合結果:3本とも勝ち切った
10/11 練習試合(@山鹿・25分×3本)
U-14
①vs 山鹿 2-1(得点:15′ ジュンペイ、24′ リョウジ)
②vs 山鹿 2-1(得点:8′ リク、16′ ジュンペイ)
③vs 山鹿 3-0(得点:10′ リョウジ、11′ テル、21′ ジュンペイ)
3本とも勝ち切りました。7得点2失点。①②は1点差のゲームでしたが、そこを落とさずに勝ち切れたのは、9月からの取り組みとつながっています。
9月の八女での試合では、勝負どころで不用意なミスから失点したり、あと一歩を少し適当にしてしまったりする場面が出ました。ディテールに対する詰めの甘さです。そこを払拭するために取り組んできた結果、今回は球際の粘り強さなどが出てきました。内容的にも悪くなかったですし、少しずつ選手の意識が良くなってきている感覚があります。
対戦してくださった山鹿さん、ありがとうございました。
足りないのは、ゴール前
一方で、まだ足りない部分もはっきりしています。フィニッシュの精度です。
前進するまでの仕組みは、選手たちはもう十分に理解できています。だからこそ、最後のところの差が目立つ。大会までの残り1ヶ月は、ゴール前の攻防に取り組みます。
フィニッシュの精度は「見る」ことから始まる——知覚と行為のカップリング
ここで一つ、概念を紹介させてください。「知覚と行為のカップリング」です。
カップリングとは「結びつき」のこと。知覚(見る・感じる)と行為(動く・蹴る)は別々に働いているのではなく、一つのセットとして結びついて働いている、という考え方です。僕の指導のベースにあるエコロジカル・アプローチの、中心的な考え方の一つです。
サッカーに置き換えると、シュートは「蹴る」技術であると同時に、「見て決める」技術でもあります。GKはどこに立っているか、DFはどこから寄せてくるか、自分の体はどちらを向いているか。それを一瞬で感じ取って、蹴る場所と蹴り方が決まります。
話が抽象的になりましたが、要するに、誰もいないゴールに向かって蹴る1本と、目の前にDFが寄せてきてGKが構えている中で蹴る1本は、同じシュートに見えて別のプレーだ、ということです。前者をいくら繰り返しても、後者の精度は思ったほど上がりません。見ているものが違うからです。
ゴール前は、ピッチの中で時間と空間が一番少ない場所です。見てから決めるまでの猶予が一番短い。だから、攻める側と守る側がぶつかる状況の中でトレーニングする必要があります。僕が「シュート練習」ではなく「ゴール前の攻防」と言っているのは、そういう理由です。
仕組みは、もう選手の中にあります。あとは、ゴール前で決めきるだけです。

